2026.05.13
令和8年のジェノヴェーゼ
「どうやってはるんですか」と聞くと、おばちゃんは決まって、「なんも特別なことしてへんのやけどね」と笑うのです。
たぶん、本当にそうなのだと思います。
特別な魔法ではなくて、水を見て、土を見て、暑さを見て、朝を見て、あたりまえのことをあたりまえにやっているだけ。でも、その「だけ」が難しい。
並んでいる野菜を見るとわかります。
香りがきれいで、味がまっすぐで、葉っぱにちゃんと元気がある。
どれも雑に触られていない。ちゃんと大事にされてきた顔をしている。
ぴちぴちしていて、いきいきしていて、こちらまでうれしくなるのです。
静原のバジルのジェノヴェーゼソース
Pesto alla Genovese, basilico di Shizuhara
ジェノヴェーゼソースはシンプルです。
葉を潰して、混ぜるだけ。
けれど、ほんのすこしどこかですれ違うと急に別の食べ物みたいになる。
葉っぱやアンチョビのダメな香りや味が漏れ出てしまったり、松の実の煎り加減が余韻を損ねたり。
シンプルはとても難しい。
あたりまえは、もっと難しい。
「なんも。ふつうにやってるだけやけどね」
そんなふうに「だけ」をさらりと言える側に、ちゃんと立っていたいといつも思うのです。
帆立かな、帆立ですね。
きっとピガートかな、ピガートなんでしょうね。